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経歴は一切不明。どこから来たのか、いつから住んでいるかも誰も知らず、聞けば人々は「いつの間にかいた」としか答えられないような、そんな人物だ。
人々が彼の存在に気が付いた頃には、ずっと昔に放棄された塗装が禿げたボロボロの家屋に住み着いていたのだ。
人々は彼に関わろうとはしない。
一部を除けば。
「おーい。起きてるんだろー。手伝って欲しいことがあるんだけどよー」
かたっぽの蝶番が外れ、傾き半ば開きっぱなしのドアを、赤い髪の少女が、右の拳でドンドンと叩く。
その度に残りの蝶番が、もやめてくれと言っているかのように、悲鳴を上げる。
家主からは、応答はない。
少女ははぁ……と息をはいた。
「悪いけど入るからな!」
ドアノブがあったであろう穴に手を突っ込み、無造作に引っ張る。
鍵も付いていない扉が開いた。
少女は靴も脱がずにずかずかと中に入っていく。
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