†第一章 振り撒かれる病

4/31
前へ
/58ページ
次へ
半ば腐りかけている木の床にあいた幾つもの穴を、少女は軽快な身のこなしでひょいひょい避けながら、奥に進んでいく。 少女が歩く廊下には、その行き止まりにしか扉が無い以外、いたって普通の作りだ。 時折ぶら下がるだけで用をなさなくなった灯りを避ける。 そして少女は一番奥の扉の前に立った。 扉には、錬金術の象徴である魔方陣が白い線で描かれている。 少女がその陣に触れると、魔方陣が緑に光り、カチッと鍵が開く音がした。 ひとりでに開く扉。 少女はその部屋の中に踏み込んだ。その背後でまた扉が勝手にしまる。 扉の中は荒れ果てた建物の外観からは、おおよそ考えられないほど、清潔で壊れている箇所も見つからない。
/58ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加