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 竜也も伊吹も京平も、それぞれ大人である。  それぞれが、流衣子に接している時は、「ああ、やっぱり大人なんだな」と思うこともしばしばだ。  確かに、竜也や京平に関しては、伊吹とはまた違った感覚で接しているが、それでも、「大人だな」と思うことはあるのだ。  だが、しかし。  三人揃うと、本当にガキの集団となれ果てるのである。  三人揃った時の彼らは、流衣子には、自分よりも精神年齢が低いように思えて仕方がなかった。 (……まったく、もう)  自分の部屋に向かう途中。  マンションの廊下で、隣を歩く京平に気付かれないように、流衣子は心の中でため息を吐いた。  流衣子は、竜也と京平が住んでいるマンションの部屋の、すぐ上の階に住んでいる。 「疲れているね、流衣子ちゃん」  だが、流衣子を疲れさせた張本人達の一人であり、人は見かけによらないと、幼い流衣子に身を持って教えてくれた男(ひと)は、そう聞いてくる。 「そうかな?」  ぎくりと思いながらも、流衣子はそ知らぬ顔で返事をしたつもりだった。 「まあ、伊吹さんが来ると、あんな感じだもんね。仲が良いのか悪いのか、僕にもわからなくなる時がある」  京平はそう言うが、本当に仲が悪いとは思っていないようである。 「一緒にいるとケンカするくせに、伊吹さんもよく遊びに来るしね」  この言葉が、『僕のことを忘れて、仲良くするとは許せない』と聞こえるのは、自分の考えすぎだろうか、と流衣子は思った。
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