少女はカエる

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 忘れもしない、一年前のあの日。  俺たちは学校の課外実習で、市内にある端恵山の中腹にある離結湖を訪れていた。  ハイキングコースとして有名なこの場所で、俺たちは楽しく騒ぎ、自然を満喫し、帰宅の途につくはずだった。  だが、事件は突如として起こった。  俺の一番の親友にしてクラス委員である河内秀樹が集合時間になっても一向に姿を見せなかったのである。  何かを感じたクラスメイト達は別れて彼を探す事になった。もちろん、俺も必死になって秀樹を探した。  突然振り出した雨が、容赦なく不安を掻き立てる。そんな中、俺たちは傘を差す事無く、ずぶ濡れになりながらも秀樹の姿を求めた。  そして、俺がちょうど湖の対岸の位置に差し掛かった時、それは唐突に俺の視界に飛び込んできた。  まるで景色の一部と化したかのように、秀樹は湖の一角に漂っていた。うつ伏せの状態のまま、四肢をダランと水中に投げ出し、親友の体はピクリとも動くことなく、水面に全てを委ねていたのである。  すぐに救急車が呼ばれ、秀樹は病院へと運ばれた。だけど、発見が遅かったらしく、結局、秀樹は助からなかった。  あれから一年。  俺たちは再びあの地を訪れる。  それはまるで、秀樹があの世から俺たちを導いているかのように……。
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