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「よーし、ここで一時解散だ。集合時間は四時だからな。遅れるんじゃないぞ」
静かな湖畔に担任の四ツ橋先生(よつはしせんせい)の声が響く。それと同時に静かに整列していたクラスメイトたちが、ざわめきと共に辺りへと散らばり始める。
だけど、俺は動けないでいた。まるで接着剤でその場に固定されてしまったかのように、俺はその場に立ち尽くしていた。
離結湖(りけつこ)。離れ離れになった恋人たちが、この場所に来ることで再び結ばれるという、何とも女の子受けしそうな伝説が残るこの場所で、俺は親友と呼べる友を失った。こうしてこの場所に立つことで、奴の顔が。声が。仕草が。脳裏に浮かんでは消え、心に抉るような喪失感を残していく。
正直、ここには来たくはなかった。だけど、無能な教師どもは例年通りという理由で、昨年、死者を出したこの場所を選んだのだ。単に別の場所を探すのが、予算的にもスケジュール的にもめんどくさい……ただ、それだけの理由で。
不意に胸を押さえる。秀樹を失った喪失感が募り、次第に涙腺が潤んでくる。いっそこのまま、秀樹の所に行ってしまおうか。そんな考えまで浮かび、俺は湖の方向に視線を向けた。
「おーい、修一ぃ」
不意にクラスメイトに呼ばれ、俺は正気に戻る。振り返ってみると、友人の日下弘人(くさかひろと)が手を振りながらこちらに駆け寄ってきていた。
「修一。何してんだよ、早く来いよ」
瀬尾修一(せおしゅういち)。それが俺の名前。
「あ、ああ。悪い。ちょっと考え事してた」
「考え事って、秀樹のことだろ?」
「なっ……!?」
唐突に核心を突かれ、思わず声を失ってしまう。そういえば、こいつ……変なところで勘が鋭かったっけ。
「いや……俺は、別に……」
何とか返事を返すが、動揺を隠し切れずに口ごもってしまう。そんな俺を見て、弘人は大きくため息をついた。
「あのなぁ……。まぁ、無理も無いけどな。お前ら、大親友だったんだし。だけどな、いつまでも引きずってったって何にも変わんないんだぞ。早く忘れちまったほうがいい」
「……そうだな」
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