2人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
「ふーん、まぁいいけど」
夏海は少し笑いがちに放った。
「で、何の用?」
俺は相変わらず、ノートから目を離さずに喋る。
「あ、そうそう。コンポ、今使ってないなら貸してよ」
「いいけど……俺ももう寝るし、母さんたちも寝てるから音量考えろよ」
「はいはい♪大丈夫大丈夫」
夏海は、机の真横の棚から大きめのコンポと、CDラックを両手に抱えて離れて行った。
「あっ……大変、両手使えないからドア開けらんないや」
ほっ、ほっ、と言いながら片足を上げてなんとかドアを開けようとしている夏海が、振り返れば居た。
仕方ないやつ……。
俺は椅子から立ち、無言でドアを開けてやった。
「お、さんきゅ~う」
「早く寝ろよな。明日も学校だろ」
「うん、おやすみ!」
「おやすみ」
夏海の背中を少し見送って、ドアを閉めた。
だらしなくて、行儀悪くて、どこか憎たらしい妹ではあるが、挨拶などはきちんと交わすと言った無邪気なところや、少し天然なところもあって、なんだかんだで可愛い妹である。
さて、と一息ついて、日記の続きに取りかかろうとしたその時、
「秋斗~~私の部屋のドアも開けて~~」
と情けない声がドアの向こうから聞こえた。
「アホめ……」
夜が更けていく。
最初のコメントを投稿しよう!