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家から学校までの道のりは、ほとんど通学路とかぶっている。
だから家を出てすぐの国道には、登校中の学生たちがちらほら見える。
数分後、まず先に俺の高校の校門前に着いた。
その時、
「秋斗~~!」
俺たちが歩いてきた反対側から、つまりは正面から、一人の男がマフラーを揺らして小走りでこっちに来た。
「涼。おはよう」
「おお、寒いな」
そいつは小学校からの親友で、佐原 涼(サハラ リョウ)。
175cmある俺よりも少し身長が高く、テンションも俺よりかなり高いやつだ。
「じゃあ夏海、ちゃんと勉強しろよ……」
俺がそう言って、校門の奥へと顔を向けた時だった。
すぐ目の前を、"あの娘"が通り過ぎていった。
"あの娘"は一人で、静かに生徒玄関に入っていった。
「おい秋斗!今話しかけるチャンスだったじゃねぇか!あー惜しいっ」
「え?何何~~?秋斗ってば今の人に惚れてんだ~~!このっ」
「痛てっ!」
夏海に背中を殴られ、ようやく体の緊急停止が解除ささった。
「秋斗、今日こそ勇気出して話しかけに行けって。見守っててやるからさ。入学以来何も進展無しじゃん」
「いや!進展無しでは……ない。1回話した」
「あんなの話したなんて言わん!彼女の机から落ちたプリントを拾っただけだろうが!」
「うぅ……」
"あの娘"とは、恥ずかしながら、俺の好きな人。
入学式の日、一目見たときからあのキュートな姿に目をやられてしまった。
杉本 麻耶(スギモト マヤ)。
セミロングのふわふわした髪型、大きな目、俺の肩くらいまでの身長がなんとも不思議な魅力を放出している。
「じゃあ秋斗、恋の方頑張ってね♪ばいばーい」
「余計なお世話だ!」
夏海はどこかご機嫌な様子で歩いて行った。
涼がそれを見送りながら、
「いや~それにしてもお前の妹は可愛いよな本当。羨ましい」
光悦の表情で言った。
「ただのアホだよ……」
「俺的には杉本の10倍可愛いと思うけどな」
「ふざけるな。前言撤回しろ。俺と彼女に詫びろ」
「はいはい、悪かった」
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