自己紹介

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 会話からも推測できるがこの三人は、日常的に人を殺してる。  殺しに対しての抵抗が異常に低い。 「次の仕事でもこんなヘマやりやがったら降ろすからな。お前が口を閉じてたら生きてられた人間が何人いたと思ってるんだ」  吐き捨てるように言いながらも、岩崎は俺が勝つ可能性を、初めから頭に入れてすらいない。  そりゃ信用はしてないだろうが仮にも、「最強の魔法使い」なんて口上と共に登場したイケメン相手に岩崎のこの対応はあんまりだ。  プロらしくない。  長髪男の実力を信頼しての事だろうが、情報の無い相手とやりあおうって時にこの対応は酷いだろ。  俺の口を塞ぎたいならノータイムで三人掛かりで攻撃してくるべきだ。一人が女を抑えるにしても、二人で来るべき。数の利を活かさないのは愚策だ。 「お前も馬鹿だよな、ファンはファンらしく陰で応援しとくべきだったな。お前じゃ電車男にはなれねえんだよ」  ファンて、誰のだよ。お前らのか。ふざけんな。  良く分からない事を言い続ける長髪男を無視して、涙を流す女を見る。驚くほどに可愛い。  涙を流す妖艶な美女を目の端でとらえ、電車男パターンもありか、等と口元が緩みっぱなしになってしまったのは、若さゆえの過ちとしか言いようがない。反省。 「……お前、頭おかしいだろ。普通、この状況じゃ笑えねえよ」  言い終わると同時に長髪男から感じるのは不可視の威圧感(プレッシャー)。  これぞ、魔力。  人外の存在で今ではおとぎ話程度でしか聞かない魑魅魍魎に悪鬼羅刹、そんな異類異形の奴ら相手にガキの頃から接してきている俺の感覚はきっと壊れている筈だ。  そんな俺が今感じているのは間違いなく死への恐怖。  幸か不幸かこれを凌ぐ威圧感なんてのは幾つも体感した事があるから何とか平静で居られるが、それでも、怖い。  相手は"それなり"に魔術を使えるみたいだが、俺に出来るのは、こけおどし程度の入門用の優しい魔術くらい。  その程度の魔術でも一般人相手なら手玉に取る自信は有ったが同業者相手となると一体どうなるか。  ――何が合っても、俺は二流だ。  でも、だから、負けたくないし負けられない。
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