自己紹介

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 助けを呼んでくれたら私もあなたも何とかなったかもしれないのに。伝えようにも上手く言葉が出せない。 「お前、何様だよ?」  木田は突然の乱入者に不快感を見せていたが強気な青年の様子に一転、喜色満面の笑みを見せた。   何だかんだ言いながらも、私も彼が何者かは気になる。  魔力持ちなら私を助けだしてくれるかもしれない。  それ以外。肉弾戦に自信があるだけなら、十中八九この三人の男たちの相手にはならない。  一人くらいなら何とかなるかもしれないけど、その間に魔術を構築されて、殺されるのがオチだ。  心配する私を知ってか知らずか、少しだけ間を置いて、青年は口を開いた。 「最近職を失った魔法使いだ」  うわ、ニートか。何か、かっこ付かないな。  ……魔法使い?  顔だってかっこいいし、きっと女性経験が云々って話では無いよね?  魔力持ちって事? いや、でも魔力持ちは大別して『魔術師』『異能持ち』『契約者』どれに属するにしても魔法使いなんて表現は用いない。  考えが纏まらない。  今日の私を尾行してた人の内の一人? いや、今日の人に私に戦意を悟らせないレベルの人は居なかった。  ならお父さんか、市原さんの部下の人? いや、どちらも腕利きの部下は相当数居るけど私と同年代の人は全員顔見知りだ。  椎名管理区域の魔術師? 万一魔力持ちだとしたらこの仮定が一番しっくりくる。  彼が魔力持ちなら、木田の魔力量を理解したうえでの行動の筈。木田は魔力量だけならおそらく二等魔術師相当。準A級ライセンスを交付されていてもおかしく無い。  彼が魔力持ちでは無かった場合、自分がどうなったか認識する暇もなく殺されてもおかしくは無い。 「とりあえず殺しとくか?」  私の思考が纏まるのを待ってくれるなんて事は当然なく、男たちは直面している現状に冷静な対応を見せている。  内容はいたく単純で酷く残酷。  緊張のせいか途中から耳に入ってこなかったけど。 「こいつ殺しても須藤さんも分かってくれるさ、仕方ない状況なんだから」  木田の台詞が話の結論であることは直ぐに理解できた。  
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