ハッタリ

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side change:平次  案の定、長髪男は阿呆のように素直に距離を取った。  俺のそう広くない交友関係はどういう訳か、一流の魔力持ちが多く存在する。というよりこの地域に優秀な人間が多い。  そのほとんどは、この状況に陥ったらまず間違いなく攻撃に転じる。  あるいは、女を人質に状況を有利に進める。 「殺せ、油断するな」  このチームを纏めている岩崎がこの考えに至るのが余りに遅い。 「ああ、ちょっと待っててくれ。直ぐ終わらせる」  プロなら内容よりも結果を求めるべき、二人掛かりで来るのが当然。妙なプライドでの一対一なんてのはナンセンスだ。  これは、まあ、付け入る隙はある。俺は友人知人の諸兄と違い、地力が低い。  最悪三人の魔力持ちと戦う可能性のある状況を全員戦闘不能なんて夢は見ない。  実力者揃いだった場合、三人を抑えるのは厳しいので、一人をぶっ倒して仲間が動揺している間に事をなすのが吉。これが、俺の経験値が導き出した最善の策。  出来れば倒すのは司令塔の岩崎が望ましいが、現実的には戦闘に自信の有りそうな長髪男を相手にするしかない。 「直ぐに終わらせるってのは、難しいだろ。お前の魔力もたかが知れてるし――」  もしも、こいつらが、魔力持ちと無関係だったら、あるいはこいつが魔力持ちじゃなかったら、若干不味い事になるが、まあいい。  それならそれで手はあるし。 「――ふざけた事を言うな!! 魔力量だけなら三人の中でも俺が一番多いんだぞ!?」  どうやら、上手い事行ったらしい。  ここまで頭が悪いと思わず岩崎に同情してしまう。どれほど力が有ろうが上手く使えなけりゃ宝の持ち腐れだ。  魔力量だけなら、という言葉から推察されるのは実力においては一番では無いという事。岩崎が一番強いと考えるのが妥当かな。  最大の問題は女を抑えている男だ。岩崎と長髪男からは魔力が漏れ出しているのを感じるがあの男からはそれほど魔力を感じ無い。  魔力を絶てる程の実力者か、あるいは、『異能持ち』。最弱だったら有り難いが違った場合はめんどくさい事この上ない。
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