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三人全員、魔力持ち。
魔力量に自信がある男が一人。
司令塔の岩崎、もう一人の男も戦闘に介入するチカラを有していると見るのが妥当か。
最低でもどちらか片方はこいつより魔力持ちとしてのレベルは上。現状戦闘に参加する意思の無さそうな二人を下手に刺激するのは頂けない。
あくまで、一対一を維持したい。
「魔力量の多さが自慢らしいが、今後は控えた方がいい」
「何が言いたい?」
長髪男が訝しみながらも口を開く。
「そりゃお前――――いや、続きは、お前の名前を聞いてからだ」
奇怪なチカラの溢れた弱肉強食の世界で俺が生きていくために必要な材料の一つ。
――正確な情報。
「俺の名前は山田平次。これでも近所の奥さん方からは、平次君は紳士ね、何てよく言われてるんだ」
情報を集め、選別し、組み立て、利用する。
名前が必要になるのはここを切り抜けてからの話だが、呼びかけるのにも必要だし。八割方偽名を名乗るだろうが現時点で――、こいつの場合は半々で本名喋るかもな。
「自分から名前を名乗るのは紳士として当然だな」
名前くらい喋っても良いかと思わせるように誘導する。地道に誘導すればまだまだ情報は絞れるはずだ。
利用するレベルにまで達した情報はそれ即ち作戦。
その上で、現場の空気を支配した日には、作戦は最早確定した未来へと繋がる。
「名前くらいはフェアに行こうぜ」
このまま会話が続けば時間が稼げる。
彼らにとっては時間の浪費は避けたいところだろう。逆に俺は誰かが横やりを入れてくれるのならそれでも構わないので、少しでも時間を稼ぎたい。
「何も喋る必要は無い。それ以上時間を掛けるな」
岩崎が口を挟む。悪くないタイミングだ。ウザい。
だけどほんの数分で分かった事が有る。確認を兼ねて少し挑発。
「ここで、攻撃されると、さっきの続きは一生喋らないが、やるってんなら――」
「木田幸太郎だ!! さっさとさっきの続きを話せ。その上で俺の力をお前に教えてやる」
愛すべき馬鹿だよ、木田君。額に手をやる岩崎が暗に本名だと教えてくれた。
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