ハッタリ

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 有名な一族の娘だとしたら手を出なんて出来ないな。色々とリスクが大き過ぎる。  いや、待て。現実から目を背けるな。切り抜けた後の事より、切り抜ける方法を考えろ。  とりあえず、言葉の意味を噛み砕いた木田がそろそろ激怒する筈だ。 「てめえ!! ふざけるのはここまでだ!!」  ほら。  中々、貴重な大人だぜ、木田君。ここまで掌の上で上手に踊ってくれるやつは中々居ない。 「木田アアアァ!!」  岩崎が叫ぶ刹那ほど前。気が狂ったような、気味の悪い気配を感じた。  木田が魔力を開放しやがった。魔力ってのは指紋と一緒で個体差が有る。全力で調べられると個人情報も糞も無い。調べる方法は無数にある。 「今すぐに、それを収めろ。一秒以上掛けたらお前から殺すぞ」  岩崎の言葉と共に、木田が練り上げていた魔力が一気に霧散した。 「わ、悪い。ついカッとなって」  シュンとなる木田。ようやく事の重大性を理解したらしい。  三人組に不協和音が発生した瞬間だ。見逃す手は無い。  落ち着く前に語りかける。 「――三分だ」  余りにも不利なこの状況。余裕なんてのは持ってないが、窺わせるくらいで丁度いい。  何より今改めて、実力差を理解した。  木田が馬鹿なせいもあって、偉そうなことを言いつつ、こいつらを過小評価し過ぎていた自分が憎い。だから二流だというのに。  空間から魔力が霧散した途端、喪失感を覚えるレベルの魔力密度。予想通り二等魔術師相当。馬鹿なため三等レベルと思いこんでいた節がある。  この量と密度は有益な武器だ。充分自慢に成り得る。 「何が三分なんだ? お前が生きてられる時間か?」  これが詭弁だという自覚はあるが。  ――元来俺は悪運が強い。  言い換えてみれば。  ――運も強い。  勿論、運頼みなんて馬鹿な真似は避けたいが、一番簡単に実行できて失敗後も取り返しが付きそうなのがこの方法だと俺は判断した。  約三分後。  圧倒的強者の演技を。  実演を伴って、続けられたら、切り抜けられる。  いや、違う。  それじゃ甘いな。  柄じゃないが、女の為にも。  ――何が何でも成功させる。  
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