ハッタリ

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 彼らは自主的に魔力の使用に制限を掛けていた。俺がこの公園に着き、彼らと対峙してすぐ魔力持ちと断言出来なかったのもそれが原因だ。  俺が三分のタイムリミットを宣言する直前の岩崎の反応からも簡単に導ける情報だ。それはいい。 「悪いな、魔法使い。全力を出しても良いみたいだ」  木田は心底楽しそうだ。こっちはそれどころじゃねえ。静かにしてろ。 「そうか、もう三十秒ほど経ったぞ。遊んでていいのか?」  問題はムトウが確認した結果俺の言葉に嘘が無かったと彼らが判断した事だ。武藤ってのはたぶん女を捉えてる男で、アイコンタクトの際に岩崎に情報を渡したらしい。  ――十中八九非戦闘系の異能、あるいは契約者。  『他人の心を読む』異能だとしたら、俺の作戦を伝えないのはおかしい。何より、俺は本気で三分で全てをかたずけるつもりは無い。  情報自体が間違って無いか? とはいえ情報をこうも真剣に受け取るんだから異能くらい使って無いと説明は付かない。 「遊んでる余裕は無いな。三分経つ前にお前を殺さなきゃダメみたいだしなあ!!」  そう言うと木田は両の手を合わせた。媒体を持たない魔術師のルーティーンとしてポピュラーなものだ。  考える時間はどんどん削られる。折角新しい情報が手に入ったのに。 「俺が殺されるのは困る」  少々展開が早過ぎて俺が置いてかれて居る感は否めないが、どうにかするしかない。後は時間との勝負でもある。  木田が大きな声で笑う。 「死ぬかどうかはお前の運次第! こいつ喰らって生きてられたら見逃してやるよ!!」  心にも無い様な事を良くも平気で吐けるもんだ。万が一生き残っても殺す気しか無いくせに。 「止めとけ、結果は見えてるだろ」  その規模の魔力をぶつけられて生きてられるはずが無い。辞世の句を残す事もなく俺は息の根を止める事になるはずだ。  残り一分前後。  準備の前に殺されるのは溜まらない。  一分経てば木田一人なら大怪我を負わせるのは難しく無い。その後どう逃げるかは問題だが、無駄死によりは何倍もマシだ。  あと一分が果てしなく長い。
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