爆弾魔

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 二枚目なそのマスクと突き放す様なもの言い。  更に、一睨みで人一人殺しかねない、その鋭く凍える眼光に魅かれ、市原に言い寄る女は多いと聞く。 「お前みたいな奴がそばに居ると、仕事の鬱憤も気持ちよく晴れてくれる」  そこで市原は破顔した。  それを正面で見ていた俺は全身に寒気が走り、鳥肌が立つのを抑える事が出来ない。  何も、市原の顔に文句があるのではなく、破顔と同時に解放された魔力のその量に問題が合った。  まるで。  まるで、突然冬が訪れたかのように、公園一帯の気温が一気に下がった。  圧倒的な魔力が空間を支配したのが原因だと思われる。 「鬼が友人、というのは考えものだが……」  悠然と。  自分がこの空間を(恐らく物理的にも)瞬間的に凍えさせたような自覚はまるで無いままに。  市原は件の三人組にゆっくり歩を進めた。 「それほど悪いものでも無い」  少しばかり、俺と市原の間に何かしらの考えの違いが生じているらしい、解決策も無いので放置するしかないが。 「鬼なんかと一緒にするな」  長い付き合いの中で市原にこんな言葉が牽制として通じる訳が無い事は分かっている。  分かっているが、言ってみた。 「成程な、やっぱりスケールが違う」  言ってはみたが、どうも新たな問題のタネを投じる結果に終わったらしい。  市原の驚いた顔からは、十分にそれが読み取れた。 「まあ、鬼でも神でも、お前らの説教は確定事項だ。一分だけそこで待ってろ」  市原はまた三人に向かって歩き出した。  いつの間にか、木田の火は消えている。  今すぐ救急車か、医療に特化した魔力持ちを呼べば、命に別条は無いに違いない。  あの、ライターはそういう風に”設定”されている。  応急処置なら俺がやってもいいが、流石にそこまで親切になるつもりはない。 「あ、おい女。大丈夫か? あの狼みたいな男は今、狩りに出かけたからな」  市原が来てから女は一度も、こちらに顔を向けていない。怖がっているのだ。  これは俺の憶測だが間違っているとは思えない。  会話の途中から、魔力に当てられたせいか、市原がピリピリしていた。  一般人でも物理的に気温の変化を感じるほどの魔力の解放もあった。  この女も、素人ながらそれを感じてるに違いない。  
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