ジャーナリスト

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「ああ、お帰りなさい平次さん」  当初の予定と違い、うすら寒い夜道を手ぶらで帰路に付くと先客がいた。 「山崎、また人の部屋の鍵勝手に開けたのか」  口ではそういうものの鍵を隠してある場所をこいつに教えたのは俺だ。咎めるつもりは無い。  疲労のせいでとがった言い方になってしまったふしは有る。 「良いじゃないですか、ちゃんと酒も持ってきましたよ」 「ああ、丁度良かった」 「ええ、さっき割ってきたばっかりですもんね」  そういうと山崎は、キッチンの方へ向かった。  それなりに綺麗なマンションで部屋数もそこそこ多く、俺の収入で賄える程度の家賃の物件であるここを見つけてきたのは、山崎だ。  記者だけあって、あらゆる方面に顔が利く様で、この物件も頼んで三日で持ってきた。  ――だから、聞く必要がある。 「お前、何で俺が酒を割った事知ってるんだ?」  厄介な妖怪連れの契約者ではあるが、可愛い弟のようなこの男。  信用はしているが、この現状は俺個人の感情で動いて良い域を少々超えている。 「フリーの魔力持ちからリークがありました」  まあ、こんな事だと思っていたけれども……。 「……ただでさえフリーの魔力持ちは少ないってのに、フリーは全員お前の知人の勢いだな」  そもそも、魔力持ち関連の事件・事故はそう多いはずも無い。  潜在的にそのセンスを秘めているだけの者も含めれば魔力持ち人口は日本だけで五百万人とも言われている。それは福岡県の全人口にも及ぶ膨大な数だ。  ただ、国の現有戦力として数えられる、言いかえれば何かしらの組織に属する事を推奨されるレベルに達しているのは八百名程度。  そんな中で毎日のように魔力持ち関連のニュースを持っているこいつは異常と言わざる負えない。 「その数少ないフリーの中でも知名度の高すぎる人がそれを言いますか……」  山崎は両の手に一枚ずつ皿を持ちながら戻ってきた。  妬ましい事にこの男、料理が上手い。  人懐こい子犬の様な笑顔。  綺麗に整った顔に、その笑顔が揃えば、鬼に金棒。年下のお姉さま方が放っておかないらしい。 「それに、俺の記事のソースはほとんど平次さんですよ」  その上、毒まで吐くため、ギャップ萌えも堪能できる。  いやはや参ったね。ホントにさ。  それじゃまるで俺が毎回何かに巻き込まれてるみたいじゃないか。  
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