ジャーナリスト

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 山崎の手の中にあるものに期待しながら、俺はコタツに入る。ああ、温かい。 「ところでお前それ記事にするき? 需要無いと思うけど」  苦笑気味な俺の台詞に、山崎は驚いた顔で言葉を返す。 「需要は有りますよ。『運命の輪』の一角、魔術師九条の娘がまんまと襲われたんですから」  両手にあった皿を山崎は机の上に置く。  何処で買ってきたのか数種類の刺身と、手作りのサーモンのマリネ。  冷蔵庫にはチーズしか入っていなかったはずだ。わざわざ買ってきたに違いない。  再びキッチンに行き、コップやら醤油やらの準備を完了させ山崎もコタツに入った。  そして対面の俺を山崎が指さす。分かりますか、と前置きを付けた。 「全魔力持ちの恐怖と憧れの象徴。その娘が襲われるのは、九条の力の衰えと捉える事も不可能ではないんですよ」 「いや、お前それは大げさだろ。プロ気取りの素人三人が調子に乗っただけで」  やれやれ。  そう言いたげに山崎は首を大きく振る。 「本気で言ってるんですか? 素人に九条ヒトミの相手が務まる訳が無いじゃないですか、連中三千万クラスのプロですよ」  俺が唖然とする間、山崎は缶ビールを俺の分と、自分の 分コップに注いだ。  それを見て、俺はコップを手に取り、一気に飲み干す。 「やっぱり、三千万クラスじゃ平次さんにとっては素人と一緒ですか」  俺の一気飲みを見て、山崎は何を勘違いしたのか。  まあ、大かた普段と何も態度が変わって無いとでも捉えたってところ。  ――まったく。  こっちは驚愕の事実に言葉も出ないというのに気楽なもんだ。  三千万クラス? プロとして認められる額じゃないか。  SMTや協会でも、かなり名前を売ってる連中がしゃしゃり出てきても違和感が無い。  あんな小手先の戦法でよく生きて来れたもんだ。   「そういや、市原はあいつらと顔見知りか?」  この辺りのSMTの一員で先ほど見た顔が思い浮かんだ。 「少し前に”説教”したらしいですね。幾つか仕事させて、それと引き換えに体内の爆弾を外したとか」  一体、そんな情報をどこから集めるのか。気にはなるが踏み込むと厄介な事になるので自重する。  この件は俺に直接関係は無い。  無いに違いない。  
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