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「市原さんも平次さん同様椎名さんを尊敬してますからね、椎名管理区で暴れるのは彼らも控えるべきでしたね」
「まあ、椎名管理区は変態の集まりだもんな」
色々な思いの詰まった俺のつぶやきに山崎が敏感に反応する。
「みんな戦闘力が異常ですからね。トップがアレだと、下もそうなるんですかね」
「木田たちも馬鹿だよな。隣の九条管理区で暴れときゃまだ安全だったのに」
山崎は呆れたように息を吐く。
「九条の娘を九条管理区で襲ったら殺されますよ。両親揃って親馬鹿なんですから」
「親馬鹿だからって椎名管理区より酷い事になるか?」
「今、日本国内で九条の当主にタイマンで勝てる人間がどれだけ居ると思いますか?」
山崎の話はいちいち回りくどい。
「犯罪者連中を含めりゃ勝てる可能性があるのも十人くらい居るんじゃないか」
「確かにその位でしょうね」
無言で話を促す。
「日本で十本の指に入る実力者が本気を出すと、大木はなぎ倒されて地面は大きく抉られるらしいですよ」
それは、想像に難くない光景だ。
俺の兄貴なら辺り一面をほんの数秒で灰に変える事が出来る。
九条の当主ならそれ以上の事も出来るはず。本気とはいえ、全力はおそらく一段上に。
チカラのある魔力持ちはそれほど恐ろしい。
「それがどうした? その位なら椎名管理区の多くが出来るし、何よりブレーキの壊れた椎名管理区より正常な九条の方がマシだ――」
「――そこですよ。九条の当主は一回娘さんを攫われかけた時にキレたらしいんですよね」
思わず、唾を飲む。
「どうなった?」
「周囲にはまったく影響は無し。現場は書斎にも関わらず、本や紙が揺れ動く事も無かったとか」
「どういう事だよ」
山崎は話の確信を敢えて逸らす節が有る。
「現場には影響が無いまま犯人だけが苦痛で顔を歪め始めたらしいですよ直立のまま」
背中に冷たい汗が伝う。
山崎の言葉から思い当たる魔術は一つ。
「まあ、使用された魔術はきっと平次さんの予想通りですよ幻覚系統の魔術の最高峰」
現在では行使どころか構築の方法さえ忘れられつつある魔術
名前すら歴史から排除された魔術。
幾つか存在する魔術の起源の一つ。
「……ロストマジックって奴か」
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