事の顛末

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 冷たい風が吹き抜けるのを肌で感じる。寒さで耳が痛い。  炎を出すスペルは有っても体を温めるような物は無い。魔術というのは時に利便性に欠ける。コタツが待ち遠しい。  俺は、はたと足を止める。「嫌な予感」の到来である。  背中に悪寒が走る、なんて事は無い。ただぼんやりと、何となく、感じるのだ。あ、このまま歩くと不味いぞ。なんてな具合に。  何かが起きそうな気がするのだ。得てして俺の特にはならない何かが。  だから俺は夜中に通る事は滅多に無い、公園経由の近道を選択した。  赤く輝く月が怪しく地面を照らし、嫌な予感を加速させていたのも、俺がこの道を選ぶ原因だったかもしれない。 「そろそろ観念してくださいよ」  言葉とは裏腹に懇願するような様子は感じられず、所々に気味の悪い笑いを含ませた様な声が聞こえたのは公園に着いてすぐだった。  声の許を探ると思いのほか簡単に見つけることができた。  それなりの敷地があるにも関わらず三本しか街灯の無い公園。  その内の一つの街灯の下に三人の男の後ろ姿。その正面には怯える女。襲われているようにも見える。  馬鹿な……。こっちが外れのルートか。  ただし、普通の人間より、幾許か優秀な俺の頭脳は一つの仮説を導き出した。  ――これは俺の考え過ぎだ。  科学的根拠が何処にも無い「嫌な予感」に当てられて、そういう風に見えてしまっているだけだ。  よく見ると、街灯の下で”楽しくお喋り"をしているように見えなくもない。  不自然ではあるが有り得なくはない。  女一人に、男が三人がかりで襲いかかろうとしているようにも、見えなくは無いが楽しくお喋りしてるだけなら邪魔するのも気が引ける。  邪魔をしないように足音を忍ばせて帰ろう。  帰宅するには、来た道を引き返すか、彼らの後ろを通り公園を抜ける必要がある。  男たちは全員が通路とは逆側、つまりは女の方を向いていて、俺に気付けるとは考えにくい。問題は女である。出口までずっとしきりを兼ねた背の低い木が植えられているが女が俺の姿を確認する可能性は高い。  進むか。退くか。  俺の邪な思考を遮るように、女が悲鳴にも似た声を上げた。 「お願い!! 逃げて!!」  どういうことだよ!! 
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