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天才と名高い椎名と並び警察内部で順調に昇進を重ねている今年四十になる息子。
警察を辞め専業主婦になってくれている息子の嫁。
来年小学生になる孫。
そして、最近二人で旅行に行くことが増えた最愛の妻。
魔力持ちとしての確固たる地位を築けたのは自分の力だけで無いのは明白。
――全ては九条の計らいあっての物。
「儂ん所の息子夫婦と何人か若い衆を連れて、九条管理区最高峰ののテストを準備しといてやろう」
ヒトミを助けてくれたのは田中としても感謝している。
とりあえず、A級ライセンス授与の件は後日考える事にして、来週は実力不足の烙印を押させてもらおう。
そう考えた後、田中は早速各所への手回しを始めた。
依頼当日。
何度かこの家に足を運んだ事のある市原の運転で件の青年、山田がやってきた。
庭に仕込んだ二人は単体でも九条管理区で田中に次ぐ実力者。
二人掛かりなら田中ですら手も足も出ない。
更に少しでも庭に意識を向かわせない為、カモフラージュの若い衆、総勢十七名の大所帯で出迎える。
田中が見るに運転手を務める市原は、田中と仁の企みに気付いてか苦虫を噛み潰したような表情になっていた。
市原からしてみれば平次は試験をするまでもなく、司馬の前当主、あるいは久遠の当主に並ぶ天賦の才を放っている。
この無粋な試験に機嫌を損ねるのは当然の帰結と言えた。
それに気付かない田中は素直に車から降りた山田に並び玄関を目指す。
巻き沿いを喰らう恐れのある若い衆は門の前で待機させたままだ。
――門を潜った直後。
田中と山田を目がけ魔力の波が全方位から襲う。
田中にとって義理の娘となる那花という女の、トラップタイプの異能。
田中は息子が同級生という事で那花を連れてきた時この能力の利便性に心底感心した。
一定の条件を踏むことで発動させる後出し型の能力。無いものをあるように見せ、有るものを無いように見せる、一言で言うなら視角情報の誤認。
素晴らしいのは条件を満たせば発動確率が百パーセントになるその確実性と、魔力感知能力を封じる贅沢過ぎる付随能力。
発動の瞬間、若干魔力の波を感じてしまうが不可避であるという事を考えれば仕方な
い。
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