九条からの依頼

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 入室すると、九条ヒトミとその母親と思しき女性が一人。  田中さん達が俺に続いて部屋に入ってくる気配は無い。 「あ、山田さん。わざわざ来て頂いてありがとうございます」  気軽な感じでヒトミが話しかけてくれた。  気持ち悪い緊張感が合っただけにこれは助かる。 「ヒトミの母です。この度はヒトミを助けて頂いて――」  日本最高峰の魔力持ちの家系の人間にこう改まれるとどうにも調子が狂う。  さて、どう切りかえそうか。 「――すまん、遅れた」  後ろを向く。  田中さんと並び、一人の男。  長身で細身、スタイル自体は先程の田中樹によく似ている。  年齢は田中樹より幾分か上か。  九条ヒトミの父親と見て間違いない。  つまり、日本有数の魔力持ち。  長男の居る俺には無縁と思えた。 「君が山田君かい?」  ええ、と頭を下げる。 「そうか、僕は九条仁この家の家長で、そしてヒトミの父親だ」  噂通り、頭のねじがぶっ飛んでるのだろうか。  自己紹介に父親アピールを入れて来る位だから、当然気構えはしておくべきか。 「田中さん、準備をお願いします」  ……九条のトップが敬語。 「さあ、山田君座ってくれ、昼飯にしよう」  何となく、リズムがつかみ切れない。  とりあえずは流れに任せる。 「本当はディナーに招待したかったんだけど、今日の夜は 会議が合ってね」 「気にしないでください」 「悪いな、今日以外は、昼間も時間が取れなくてね」  朗らかに笑う、九条仁。  随分聞いていた噂と違うじゃないか。  
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