事の顛末

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 助けを求められる可能性は有るだろうと感じてはいたが、まさか、避難を勧められるとは思っても居なかったので完全に仁王立ちで固まってしまっていた。  当然、三人の男たちからも普通に見つかってしまう。 「あぶない、見られてたか」  スキンヘッドの男は言葉の割に慌てた様子は無い。  きゃっ、と短い悲鳴とともに、女は呆気なく、中肉中背の男に捕まっているし。  人質の様に後ろから取り押さえられている女は顔をこちらに向け唇を固く噛んでいる。  中肉中背の男は女を捉えたまま、スキンヘッドの後ろに隠れた。潔し。喧嘩は二人に任せる気満々だ。 「見られちゃったな。どうする? とりあえず動けなくしとくか?」 「馬鹿言うな、無駄な行動は慎め。少々危険でも無視するべきだ」  下品に笑う長髪の男をスキンヘッドが窘める。 「この女は一般人にも広く顔が売れてる。平和ボケした馬鹿が、勇者面して近づいてきただけだろ」  それにしても、平和ボケした馬鹿とは、勇者面とは、チンピラ纏めてるだけの割には中々大きい事を言う。  女なんかは、今にも泣きそうだ。  これはどうも、嫌な予感が的中したらしい。  回避方法が分からない嫌な予感にどんな意味が有るのかは甚だ疑問だが、どうにかするしか無いらしい。何故こんな真夜中にこんな事に巻き込まれてしまうのか。 「おい、そこの。今なら見逃してやるからさっさと消えろ」  長髪の男の声が無機質に響いた。  ――これが、事の顛末。
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