九条からの依頼

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 ああ、これこそ俺の求める平和。  現状に違和感が無いとは言わないが、それでもこの程度なら日常へのスパイスには丁度いい。 「さて、平次君。そろそろ本題に入ろうか」  ついさっきまで俺を名字で呼んでいた仁さんの名前呼びに思わず身構える。 「本題?」  ヒトミも伝えられてなかったらしく俺の聞きたかった事を素直に聞いてくれた。 「ヒトミ、いくらなんでも食事に誘ってお礼終了とは言えんだろ」  主に家柄的に。  何かしらの荷物を持って入ってきた田中さんの言葉に補足する。  田中さんの横には市原も居た。 「まあ、そういう事だね。食事はいわば挨拶だよ」  ほれ、と田中さんが仁さんに何かを渡した。  それにしても、九条の関係者に尽くタメグチとは、この爺やはり中々侮れない。 「平次君。君はさ。僕たちに隠してる事が有るよね?」  背筋が凍る。  今、俺の前に座っているのが、九条仁であるという事を再認識するには十分な迫力。 「いえ、隠し事をするほど深い話をしたつもりも、迷惑を掛けるほどの嘘も付いた覚えもありません」  敢えて強気。  断言する。迷いは見せない。 「そうか、残念だ」  余りに早く身を引くためこちらが呆気にとられる。 「市原君。君に一つ質問したいんだけど良いかな?」 「問題ありませんが」  どうも、俺から情報を引き出すよりも市原からの方が早いと判断したらしい。  『運命の輪』に名を連ねる、市原と九条。最強の集団の中での序列は九条の方が随分上だ。  確かに答えは引き出しやすいかもしれない。 「単刀直入に聞くよ」  九条仁がスッと眼を細める。嘘を付いても簡単に看破しそうな、圧迫感が合った。 「山田平次の”本当”のフルネームを教えてくれないかい?」  莞爾たる微笑で持って九条仁はそう告げた。  
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