九条からの依頼

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「やっぱり、直接確認しないと気持ち悪いだろ?」  分からなくも無いので首を縦に振る。 「実力確認も勝手にさせてもらったしね」  一体何時の間に? 食事のマナーの話か? 「それに、ヒトミばかり喋っていたけれど貴方の人間性を少しでも見てみたくて」  人間性? ヒトミの話に俺はただ引きつった笑いを浮かべただけだ。  人格の判断材料になるとは到底思えない。 「結局、そいつの評価はどうなったんです?」  緊張していた市原がいつの間にか復活し、偉そうに質問する。 「人に点数を付けるのは憚られるが今のところ文句の付け所が無いね」  点数を付けるのは憚られる、とはどの口が言うのだ。  そう思ってしまうが、評価事態は身に余る。  昼飯をご馳走して貰っただけだというのに。 「ホント、平次さんが良い人で良かったわ」  麗香さんの笑顔は天使を彷彿とさせる。  ヒトミにも似た物を感じるが、やはり慈愛というものはある程度の人生経験の後に生まれるのかもしれない。 「そういえば、勘違いしないで欲しいんだけど君が協会に登録していないフリーの魔力持ちでも特に対応は変わらなかったからね」  仁さん優しげに告げる。 「どんな人でもヒトミの恩人には変わり無いですから」  麗香さんの言葉に仁さんが頷く。  なごんだ空気の中、時間が緩やかに流れる。 「そうだ、俺が意図的に司馬の次男の名前を騙る、欲に塗れた人間だった場合はどうしたんですか?」  この二人は山田平次の名前から司馬平次までたどり着いてた。  もしもその仕事の速さを逆手に取られていたら?  帰ってくる答えは、すぐさま家から追放したね、くらいのはず。その後笑ってお終い。  そのくらい軽やかな空気の筈だった。 「そんなの決まってるじゃないか。君とヒトミの接触は計画的に行われた物だと判断して今拘束されている三人と、君の身柄を預かる事にしただろうね」  ……。 「……その後は?」  恐る恐る、尋ねる。 「そりゃ、黒幕の存在を確かめるよ。幾ら掛かっても情報は、一之瀬から買っただろうし――」  魔力を持たないとも噂される情報屋、一之瀬。  まあ、『抜け番』なので初代が魔力持ちなのは間違いない。  ただ、信憑性の高い山崎からの情報で二代目を探しているとか。  ああ、違う。今はこんな事を考えてる場合じゃない。現実に目を向けろ。  
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