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さて、最強の魔法使いだと、冗談のつもりでのたまったものの。おかしな事が有る。おかしいというか、不自然な事だ。
本来、この男たちは、俺をいい年して純粋無垢、子供の頃の夢を忘れないピーターパンの様な男、くらいに認識するはずだろ?
鼻で笑って貰った方が救われる。
なのにさ、何で真剣に話し合い始めてくれてんだよ。
「岩崎、どうするよ、これ」
発言者は長髪男。
名前出しちゃうんだ。
名前出すってことはあれだな、逃がす気が無いんだな。
「一応、警戒はしておけ。出鱈目だとは思うが、誘拐の対象が対象だからな」
スキンヘッドもとい岩崎は、慣れたように、メタボを窘める。
名前に関しても、少しだけ触れた。
「後な、毎度の事だが名前は出すな。俺たちのやってる仕事
において情報がどれだけ大事かは口が酸っぱくなるほど伝えてるだろ」
情報屋に名前を聞くだけで芋づる式に過去の悪行が露呈する。というのは良くある話だ。もちろん一般人、魔力持ち問わず。
この一帯では山崎という男が有名だ。今年大学を卒業する様な若さだが情報の質の高さで言えば数ある情報屋の中でも最高峰だ
「確かに、本物の可能性は有るかもな」
メタボが楽しげな声音で呟く。
岩崎は自身の右斜め後ろで女を抑える男と目を合わせて、肩を竦めている。
メタボと話が噛み合わない事はよくあるらしい。
簡単に流してやる辺り、中々仲がいい三人組みたいじゃないか。
いやいや。それはどうでもいい。
そんなことよりも、だ。
――こいつらもしかして”同業者”か?
一般人ならまだしも、魔力持ち三人相手取って女を助ける?
……さすがに無茶だろ。俺一人でも逃げ切る自信は無い。
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