眞北

1/8
前へ
/114ページ
次へ

眞北

 車のサーチライトが辺りを照らしながら、忙しなく道路を行き交う。夜でも国道沿いは昼夜問わずに明々としており、夜に一人で歩いても時間帯さえ間違えなければ不安は微塵も感じない。  昼か夜かでは多少雰囲気は違えども道路沿いに立ち並ぶ店の照明は明るく、中でもひと際パチンコ店の照明やネオンは群を抜いて煌々と輝いている。傍を通れば歩道と店内、壁を隔てて多少なりとも距離が開いているのにもかかわらず、冠高い電子音が聞こえてくる。横目に通り過ぎる亜子の耳にも嫌でも入ってきた。  ずらりと並ぶパチンコ台の前にこれまたずらりと所狭しに座り、いい大人が台に釘付けになっている様子は滑稽だった。  亜子がまだ小さい頃、瑠璃子がその当時付き合っていた男の人に連れて行ってもらったことがあったが、亜子も小さかったせいか何がそんなに面白いかさっぱり理解できなかった。  正直、今でもよくわからない。  ただ煩くて、タバコの煙が煙たくて、とそんな印象しかなかった。玉が弾かれてそれに反応してかグルグル回る画面は確かに面白いように思えたが、数時間同じものを見せられては流石に飽きてしまう。『大人になれば面白さがわかるよ』と、ありきたりな台詞を言われたが、パチンコに亜子自身がはまって、あの台の前に並び座る中に大人になった自分の後姿が混ざる光景を想像してしまうだけで亜子は嫌悪感で顔をしかめてしまう。  今、現在進行形で瑠璃子が付き合っている眞北がパチンコをしないと聞いて、亜子は心なしかほっとした覚えがある。瑠璃子が結婚を考えていると言って亜子に紹介してきた以上、瑠璃子が付き合う男の人への採点は亜子の中で嫌でも厳しくなる。  親とはいえ、今まで個人のことなので瑠璃子の交際相手について特に言及することはなかった。子供じみていると思ったし、興味がなかったというのが一番だろう。しかし、結婚相手になると言うならば話は別だった。
/114ページ

最初のコメントを投稿しよう!

65人が本棚に入れています
本棚に追加