眞北

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 「こんばんは、亜子ちゃん」  「あ、眞北さん」  お弁当が入ったビニル袋を持った眞北との思いがけない遭遇に、亜子は目を丸くしたのだった。  今日はよく公園に縁がある。  亜子はそう思わずにはいられなかった。  つい数時間前まで一人になりたくていた公園。そして座っていたベンチに、現在は眞北と今しがた買ってきた弁当を仲良く広げている。  成り行きとは頭ではわかっているものの、なぜこうなったのだろうと亜子はついつい考えてしまう。  母、瑠璃子の恋人である眞北とぽっかぽか亭に弁当を買いに来て、ばったり出会う。亜子も買いに来たことを知り、折角だから一緒に食べようということになり、公園で遅めの夕食をとることになったのである。  亜子も一応は知らない仲でもないので眞北を家に誘ったが、夜風も涼しいし、たまには意趣替えもいい気分転換になるだろうという眞北からの提案で二人公園のベンチに並び座ることになったのだ。  他愛もない会話を交わしつつ、膝の上に広げたお弁当をパクパクと食べていく。  できたてなだけにまだ温かい。  公園の外灯も完全に暗くなってみれば辺りを照らすには十分明るく、夜風も心地よい。 始めは眞北の突拍子のない提案に冗談かと思った亜子だったが、案外悪くなかった。  「さっきまで瑠璃子さんと会っていたんだ」  眞北の言葉に、亜子は箸を止めた。  「お母さんと?」    ギクリとした。  やはり今日のあの一件のことが気になって、知らず知らずに声が緊張してしまう。  「お母さん、何か言ってた?」  必死になんでもないように装って尋ねる亜子に、眞北は首を横に振る。  信じて、くれたんだ。  私のこと信じてくれたんだ。  亜子は嬉しさを感じる前にホッと胸を撫で下ろした。  「落ち込んでいるんじゃないかと思って。大丈夫? 亜子ちゃん」  心配げな表情で亜子を伺う眞北に、亜子ははっと気付いて少々罰の悪そうな顔をした。  「励ましてくれてるんだよね? これって」  さっきまで瑠璃子と会っていたのだ。大方、瑠璃子から学校での出来事をきいたのだろう。
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