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亜子の頬を撫でる風に僅かに蒸し暑さを感じ、亜子が空を仰ぐ。風に運ばれてきた雲がさっきまで星空を覗かせていた空を覆い、暗雲が立ち込める。か細い星の瞬きは夜色に染められた雲に遮られ、見る影もない。
今夜の予報は雨。
今朝のニュースで言っていたのを亜子は思い出す。未明には雨は上がり、朝が来る頃には晴天が顔を出しているとも。
じっとりとした汗が肌を伝い、張り付いてくる髪が気持ち悪い。
これから雨が降る鬱陶しさに顔をしかめた。
ポツ…ポツ、ポツ、ポツ。
空から落ちてきた雫が地面に水跡をつけていく。雨脚はすぐに太くなって、庭から聞こえていた虫の声も徐々に雨音へ変わっていく。
地上に降り注ぐ雨が乾燥しきった大地に恵みの雨をもたらして、緑の草木が雨滴を受け鮮明な青を取り戻し瑞々しく歓喜する。
その日の天気予報は実に正確だった。予報通り雨音が完全に消えたのは太陽が東の空に姿を現す少し前のことだった。
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