65人が本棚に入れています
本棚に追加
きっとタバコが出てきたという事実だけを見て、誰も銘柄まで見ないと思ったに違いない。だから手短にあった自分のタバコを、持ち物検査に乗じてこれ幸いと入れたのだろう。
そうだとしたらあまりに不条理である。いくら自分が嫌いだからと言って、そこまでされる覚えは亜子にはない。
再び湧き起こる悔しさに、一瞬涙が滲む。亜子はぐっと堪え、折れそうな心を奮い立たせて職員室を後にする。
まだ担任が犯人とは決まったわけではない。限りなく黒に近いグレー。
知らなければ必要以上に勘ぐらずに済んだのに、見てしまった以上疑わずにはいられない。真実がどこにあるのか亜子にはわからない。だとしても担任を疑いの眼差しで捉えた亜子は、ひたすら答えのない悩乱を繰り返すしかなかった。
最初のコメントを投稿しよう!