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「まあ、午前中には、『この人も別の病棟』に移るんだし」
と、岡田先生が「中年の女性」を、なだめるように言いました。
「すこし冷静になろうよ。この人も謝っていることだし」
それから「岡田先生」は、ちょっと目配せをしてから、立ち上がり、ぼくのそばに来て、
「すまなかったね」
と、低声(こごえ)で言いました。
とにかく「ぼく」に一応謝らせて、その場を収めよう、というのが、岡田先生の「対処策」だったんだな、と察しました。
ナースと「中年女性」を残し、ぼくを促(うなが)して、カンファレンス・ルームを出ました。
「告訴するからね~」
と、部屋から「大声」が響きました。
「離脱症状(禁断症状)なんだよ」
岡田先生が、患者についての「守秘義務」を、ちょっと侵してまで、ぼくに「耳打ち」してくれました。
「というと・・・覚せい剤?」
「うん」
岡田先生は渋い顔で答えました。
「『離脱症状』起こすと、周囲すべてが『敵』に見えるらしい。本来は『依存症専門病院』に、送るべきだが、まずは『体調』を、ここで整えてやってからじゃないと、いけないから。
君も気をつけて。
余計な『親切心』は、いらない。
患者は、自分の病気を治すことだけを、考えるんだよ」
ぼくをベッド・スペースに送ってくれました。
それからまた、カンファレンス・ルームに、戻っていかれたようでしたが、ぼくはそのまま眠ってしまいました。
(第三章に続く)
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