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「あの」
と、ぼくは少し話を別の方向に移しました。
「赤城の『専門病院』は、いつ退院されたんですか?」
そう訊いてみました。
「うん」
俊藤さんは、少しためらうように、答えました。
「最低、3カ月はいなければならないんだけれど。。。2週間で脱出しちゃった」
「ええ!」
ぼくは、さすがに驚きました。
「駆け落ち、しちゃったのよ」
「か、駆け落ちですかあ?他の患者さんと?」
「ええ。もう別れちゃったけど」
・・・
ぼくが答えないでいると、
「でも、もう『覚せい剤』とは、一切手を切ったから、心配しないでね」
と、言いました。
車が「別処沼公園」に近づいてきました。
急に、グンと体がシートに抑え込まれました。
俊藤さんが、車のスピードを上げたのです。
ちょうど「別処沼」の横の道路に、さしかかったあたりです。
突然のことでした・・・
「お前はな・・・」
俊藤さんとは、別の声がしたのです。
「お前は、呪われているぞ~」
はっきり、そう聞こえました。
「おとなしくしてよ!やめて!大事なお客さん乗せてるんだから」
俊藤さんが、叫びました。
俊藤さんは、車線を変えながら、前の車を次々追い抜き始めました。
体が右左に振られました。
何が起きたのかわからず、
「俊藤さん、スピード落として!」
と、ぼくは叫びました。
「だめよ、あなたも呪われる」
俊藤さんが、悲鳴に近い声で、返事しました。
(第五章に続く)
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