第二章  不思議なひとり言

4/6
前へ
/24ページ
次へ
 その「夜」は、ひどく騒がしくて、大変でした。    いや・・・  これは「経験済み」なんです。  何度も入院を経験していますから。  ひっきりなしに鳴る、人工呼吸器の「警戒音」 「用もないのに(おそらくは)ナースコールし続ける患者」 「大きな声で、病院に悪態をつき続ける患者」 「患者を叱りつけるナースの声」 「『しっかり自分で呼吸して!』『目を開けてください!』『××さん。立てる?立てなきゃ、尿瓶 (しびん)持ってこようか?』」 「助けてくださ~い。看護婦さ~ん」 「医者を呼べよ。医者を~」 「痛いよ~。痛いよ~」  まあ、賑やかです。    その上、お隣の「中年女性」は、ぼくがバッグを返した直後から、 「目を覚ました」  のか、 「寝ごと」  なのか、すごく大きな声で「ひとり言」をはじめたのです。    いや、「会話」のようでした・・・      意味は、よくとれませんでしたが、「声色(こわいろ)」を使っているのか、まるで「二人の人間」がいて、「言い争い」をしているように、聴こえました。  まあ・・・ 「そういう自分も」 「急性膵炎(スイエン)」で入院した時は、ひと晩中「痛み止めくださ~い」と叫んでましたが。。。  やっと、明け方近くに「うとうと」となったところを、 「申し訳ありませんが、ちょっと目をさましていただけませんか?」  と、ナースに起こされました。 「お立ちになれますか?」  と、ナースが恐縮したように言いました。 「え、ええ?」  ぼくは、ナースの渡してくれた、「マスク」をして、要領を得ないまま、「ふらふら」しながら立ち上がりました。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加