第二章  不思議なひとり言

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「カンファレンス・ルームにちょっと、おいでいただきたいんです」  という、ナースの後を、「点滴棒」を転がしながら、付いていきました。 「お隣のカーテン、開けられました?」  そう、ナースに訊かれました。 「ええ」  ばくは、意味のわからぬまま、答えました。 「バッグが落ちていたんで、拾って、お隣に返したんです」 「・・・親切はいいんですが。そういうときはナース・コールしてください」 「どうかしたんですか?」 「プライバシーを侵害されたって、クレームがついてるんです」 「ええ!」  ぼくは、驚愕しました。 (だってさっきは「ありがとう」って、いったじゃないか)  と、心の中で叫びました。    カンファレンス・ルームには、「当直」の先生まで、おられました。  顔見知りの「岡田先生」だったので、少し「安心」しましたが・・・      ぼくが、部屋にはいるなり、あの隣の、「中年の女性」が、「わめき」はじめました。 「病院のベッド・スペースは、プライベートなものだ。告訴してやる。さもなくば、すぐこの場で『こいつ』を強制退院させろ」  と、いうような意味のことでした。      ぼくは、むっと、しましたが、 「この人、普通じゃない」  と、思ったので、 「親切のつもりだったんですが、不快な思いをさせたとしたら、すみません」  と、一応あやまりました。
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