運命の日

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しばらくしてから、悪魔は炎を離した。 黒い炎を押し付けられていた場所を見ると、くっきりと何かのマークが描かれていた。 それは、星型に似ている。 「これ、何?」 「契約印だ。それがある限り、俺はお前の望みを叶えるための力となる」 美夕は契約印を見つめた。 それを見ていると、復讐の思いが一層強くなる。 「1つ、"禁忌"がある」 悪魔の声のトーンが少し低くなったような気がした。 「……禁忌?」 「お前は、決して人を好きになってはいけない」 「……何で?」 美夕には、何故そんなことが"禁忌"なのか、理解出来ない。 「お前は一度死んだ人間だ。 つまり、お前の存在は世界の理を乱している。 そんなお前が生者と愛し合うと、最悪世界が崩壊する。 死者と生者は、決して交わることはないからだ」 美夕は黙って頷いた。 そんな"禁忌"を犯す気はない。 私は復讐が出来れば、それでいいから。それだけでいいから。 悪魔は美夕の手を取った。 「では、戻ろう。生者の世界へ。 望みを、叶えるために」 美夕は悪魔に手を引かれながら、ゆっくりと歩き出した。 深い憎しみを胸に秘めて。
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