偽りの自分

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悪魔が戻ってくるまでの間、美夕はあの忌ま忌ましい事故のことを思い出していた。 思い出せるのは、誰かに背中を強く押された感覚。 そして、美夕を見て笑う男。 男の顔は朧げで、よく思い出せない。 しかし、あの不気味な笑みが美夕の脳裏にくっきりと焼き付いていた。 しばらくして、悪魔は戻ってきた。 「家を見つけた」 悪魔は右手に握っている鍵を美夕に見せつけた。 「…いくら何でも、見付けるの早くない!?」 「"同業者"で不動産屋をしてる奴がいたから、譲ってもらった」 悪魔が言った"同業者"という言葉が、やけに頭に残る。 「…"同業者"って、悪魔?」 「当たり前だろ」 悪魔は美夕のことを気にせず歩き出した。 美夕はもう一度交差点を睨むように見つめ、悪魔の後を追った。
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