偽りの自分

6/20
前へ
/277ページ
次へ
―――――――― 今日の星条高校は、『転校生が2人来る』という話題で持ち切りだった。 誰もがその話をしている。 そのせいか、教室内はいつにも増して騒がしい。 そんな様子を鹿賀野亜希(カガノアキ)はぼんやりと見ていた。 彼女は3週間前に起こった事故を引きずっていた。 親友――織田美夕の死を。 「よっ、鹿賀野!」 亜希が声の聞こえてきた方を見ると、1人の少年がいた。 クラスメイトの矢代駿(ヤシロシュン)。 明るい性格が特徴的だ。 彼は美夕のことが好きで、亜希はよく相談に乗っていた。 そのため亜希とは結構親しい。 「転校生の話聞いたか?」 「うん。2人来るんだよね?」 「らしいな。どんな奴が来るんだろうなぁ」 その時、教室の扉が勢いよく開き、担任の笹川先生が入ってきた。 立って話していた生徒達が、一斉に慌ただしく着席する。 「えー、みんなも既に知っているとは思うが、今日は転校生が2人来る」 笹川先生の言葉に、教室内はざわつき始める。 「静かに! じゃあ入って、自己紹介して」 笹川先生の言葉を合図に、2人の男女が教室に入ってきた。 冷たい目が特徴的な男子に対し、女子の方はにこやかで人当たりのよい笑みを崩さない。 女子のその笑みはどことなく美夕に似ている気がして。 亜希は少し悲しくなった。 女子が口を開く。 「初めまして。私は――」
/277ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加