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「――私は、橘香織(タチバナカオリ)です。皆さん、これからよろしくお願いします」
「……中道零(ナカミチレイ)だ。よろしく」
『織田美夕』だった少女――『橘香織』は、満面の笑みで。
一方、悪魔の少年――中道零は、素っ気なく吐き捨てるように言った。
香織は教室を見渡した。
3週間ぶりに見る、教室の風景。
たった3週間見ていなかっただけなのに、異様に懐かしかった。
教室を見渡していた香織の目が、美夕の親友だった亜希の姿を捉える。
懐かしくて出そうになる涙を、必死に堪える。
何故なら、亜希は『橘香織』の親友ではないから。
亜希は『織田美夕』の親友だから。
「橘さんと中道くんは親戚同士だそうだ。2人の席はあそこな」
笹川先生は最後列にある隣同士の2つの席を指差した。
香織と零は指定された席に座った。
そこで、ホームルームの終了を告げるチャイムが鳴り響いた。
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