偽りの自分

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笹川先生が教室からいなくなると、あっという間に香織と零の席の周りに人集りが出来た。 集まった生徒達は、我先にと自己紹介をし、様々な質問を香織と零に浴びせる。 香織は零がイライラしているのがわかった。 零はあまり騒がしいのが好きではないのだ。 悪魔らしいな、と思う。 香織が質問に適当に答えていると、授業開始を告げるチャイムが鳴り響いた。 残念そうに散らばっていくクラスメイトを見て、香織はほっと胸を撫で下ろした。 香織は鞄の中から教科書を大事そうに取り出し、パラパラとページを捲った。 「授業、ついていけるかな……」 香織は誰にも聞こえないくらいの小声で、そっと呟いた。 少し嬉しそうに笑って。 その表情を、零がいつもの冷たい目で見ていたとも知らずに。
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