偽りの自分

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その日の放課後、香織と零の2人は屋上にいた。 朝からずっと質問攻めに遭っていたため、静かな場所でのんびり出来ることが純粋に嬉しかった。 「私、高い所って好き。 全てが見える気がするから」 校庭を見下ろしながら、不意に香織がそう呟いた。 すると、零が楽しそうに口を歪ませた。 「俺も好きだ。 弱い人間共を見下ろせるからな」 「……流石、悪魔ね」 多少の皮肉を込めた言葉を、零は全く気にしなかった。 零は校庭にいる人間に視線を移す。 「人間は、弱くて強欲だ。 望みを叶えるためならどんなことでもする。例え、それが自らの身を滅ぼすことになろうとも」 零の声は酷く冷ややか。 「だからこそ、人間は面白い」 その言葉は静かな屋上に響き渡った。
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