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香織は足音が誰のものなのかということが気になった。
屋上には滅多に人は来ないからだ。
屋上の扉がゆっくりと開かれる。
そこにいたのは、
「……亜希……っ!?」
悲しげな表情を浮かべる、『織田美夕』の親友――亜希だった。
記憶の中の亜希は笑顔の絶えない、いつも明るい女の子だった。
だから、亜希が悲しげな表情をしているのが、気になった。
「あ、えっと、橘さんと中道くん、だよね……?」
亜希は少し戸惑っているようだ。
屋上に人がいるとは思ってなかったらしい。
「……香織って呼んで。私も亜希って呼ぶわ。それにこいつのことは零って呼び捨てでいいよ」
香織は隣にいる零を指差した。
零が不機嫌そうに舌打ちしたが、香織は気にも留めない。
亜希はクスッと笑って、頷いた。
それは、香織の記憶の中の笑顔と同じ笑顔だった。
「何で香織は、ここにいるの?」
「少し静かな所に行きたかったの。ね、零?」
零は何も答えず、校庭を、いや人間を見下ろしている。
「亜希こそ、何で?」
そう聞くと、亜希はまた悲しげな表情になった。
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