運命の日

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目を覚ました美夕の目に映ったのは、真っ白な世界だった。 「……ここ、どこ?」 自分の声だけが辺りに響き渡る。 そのことが、美夕を酷く不安にさせた。 どこを見ても真っ白で、現実味のない所。 そこに、美夕は1人でいる。 ぼんやりと辺りを見渡していたその時、美夕は思い出した。 自分は誰かに背中を押されたせいで車に轢かれ、死んだ、ということを。 「私、死んだんだ……」 自分が死んだことに対する絶望と、殺されたことに対する怒りが、美夕の心を支配する。 一体、誰が…何のために……私を殺したの!? 込み上げてくる激情を押さえ込む術を、美夕は持っていなかった。 不意に、知らない歌が聞こえてきた。 全く聞いたことのない歌だった。 なのに、その歌はどこか懐かしい感じがした。 何故だろうか。 憎しみで嵐のように吹き荒れていた心が、少しだけ休まるような気がした。
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