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「ここ、もしかして天国……?」
頭の中に、天国が思い浮かぶ。
当然のことながら実際に見たことはないため、ただのイメージでしかないが。
「違います」
突然、背後から聞き覚えのない声が聞こえてきた。
清らかで優しい、透き通った声。
美夕が振り向くと、そこにはまるで天使のような人がいた。
「だ、誰……?」
「私は、天使です」
清らかな笑顔だった。
天使に相応しい笑顔だ、と美夕は思った。
美夕は突然現れた人物が天使だということを、少しも疑っていなかった。
おそらく、このような現実味のない可笑しな場所にいるせいで、冷静な判断力を失っているのかもしれない。
さっきの歌は、この天使が歌っていたのかな……。
「ここは"この世とあの世を繋ぐ道"です」
"この世とあの世を繋ぐ道"……?
全く聞いたことのない言葉だった。
「ここであなたが天国に行くか、地獄に行くかが決まるのです」
天国と地獄。
その言葉が頭に何度も響く。
その言葉は、美夕が死んだという事実を明確に表していた。
頭で理解していても、納得なんて出来なかった。出来るはずがなかった。
突然、自分の人生を、見知らぬ人間に一方的に奪われたのだから。
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