運命の日

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「………私はどっちに行くの?」 天国か、地獄か。 すると、天使は笑みを浮かべた。 それは、あまりにも綺麗で、清らかで、ずっと見ていたくなるような笑みだった。 私は、天使は人間とは明らかに違う、ということを感じ取った。 こんな綺麗に笑う人間が、この世に存在するわけがないと思った。 「天国ですよ。あなたは素晴らしい人間でしたから」 「……っ、じゃあ何で私は殺されたのっ!?」 美夕の瞳から大粒の涙が零れる。 感情が溢れ出す。 まるで留まることを知らないかのように。 悔しかった。 悲しかった。 憎かった。 全く知らない人物に、自分の人生を、未来を、消されたことが。 嫌だっ!! 天国なんて、行きたくないっ!! 私は……私は……っ!! 「ならば、お前はどうしたい?」 聞こえてきたのは、天使の声ではなかった。 それは、背筋が寒くなる程冷たい声。 いつの間にか美夕の隣に人が立っていた。 その出で立ちは天使と対照的で、まるで――。 「――……あく、ま……?」 「そうだ。俺は悪魔だ」 悪魔はあっさりと肯定した。 冷たい声は変わらない。 「で、お前はどうしたい?」 その問いにすぐに答えることが出来なかった。 答えは決まっていたが、それを口に出すことに躊躇いがあった。
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