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ひらひら…
俺が座って見ている隣の桜の木から、ピンク色の花弁がどんどんと散っていく。芝生と風が花を掠める。その雰囲気の中で散っている桜はやっぱり儚い。でも俺は桜は嫌いじゃない…というか好き。前から好きだったけど、一昨年更に好きになった。
「あ、緋優くんやん」
「…あ、よし」
「あれ緋優くん桜好きなん?」
「うん、好きだよ」
今日から長い春休みが明け、大学生活がまた始まった。去年、期待と不安を織り交ぜながら入学した大学。あっという間に季節が二回程くるりと回り、自分はもう大学三年生になる。よしとは大学で初めて友達になった、良き親友。話が合うし、一緒にいて凄く楽しい。
でも楽しいけど、
この二年間どこか寂しかった。
理由は分かってる。多分あいつがいねえからだ。「緋優くん、緋優くん」って言いながら何時も俺の近くにいたあいつ。年下だったけど、頼りがいがあって、なんか腹立つ程かっこよくて。何より俺自身の心の中に初めて入ってきたやつ。あの頃あいつがいなかったら、俺は多分、ずっと自分を押し殺して生きていたかもしれない。ちゃんと俺という存在を見てくれたっていうのは初めての経験だった気がするんだ。
あいつが桜の下で約束してから二年。約束を守ってくれているなら、あいつもこの大学に来ているのかな、って思う。でも、もう二年前のことだ。勉強している間に進路が変わるかもしれない。やりたいものが見つかるかもしれない。
そしたら、ここには……、
「なあ、緋優くん、」
「ん、なに?」
「どないした?」
「…、なんでもねえよ」
「そんな寂しそうな表情をしながら言われても説得力あらへんよ、」
「え…、」
「まあ、何があったかは知らんけど、緋優くんは笑顔が似合うで?俺は笑ってる緋優くんが好きやからな」
「…っ!!」
よしが、緋優くん顔真っ赤やんーと言いながらケタケタ笑う。
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