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「もう、からかうなよ!」
「ごめんて」
「…………、」
そう言いながら、俺の頭を撫でると、じゃあ俺用事があるからほなまた明日ーと言って、よしが歩き出していく。なんだったんだろ、と感じつつ。彼はきっと俺を慰めようとしてくれたのかもしれないと心の奥で思う。これは彼の優しさなんだろうな。深くは聞かないけど、彼もきちんと俺を見てくれてるんだな。そう思うと、先程まで考えていたことが晴れていく。
(っし、元気出たっ)
そろそろ人も減ってきたし、俺も帰ろうかな。そう思い、立とうとした時だった。
「緋優くん、」
懐かしい声が耳に入る。
トクンと心臓が高鳴るのが自分でも分かった。脈を打つのが早くなっていく。早くなり過ぎてどうにかなりそうだ。そんな自分の心臓を落ち着けるようにして、後ろを振り返った。
そこにはあいつがいて。
もう二年も前のことなんだから、あいつはここには来ないんじゃねえかって。俺なんかどうでも良くなってんじゃねえかって思っていたのに。段々と目頭に熱が溜まっていくのが分かる。
「俺、この大学に合格した」
サアーと風が吹く。
桜の花びらが舞い散る。
「だから伝えにきたよ、」
一面にピンクが広がる。
あいつが微笑んでる。
「…俺愛してんだよね、緋優くんのことを。好き過ぎてどうにかなっちゃいそうなくらい好きなんだよ、」
いつの間にか、ポロッ、と自分の瞳から零れだす雫。どんどんと頬を伝っていく。止めようとしてもとめどなく溢れてる。あいつが、旬都が慌てて駆け寄ってくる音が耳に入ってくる。それと少し経ってから、旬都の体温を間近に感じた。この間まで、全然感じられなかった、俺の好きな人の暖かさ。
俺も愛してるよ。
ずっと大好きだった。
そう伝えれば、旬都は嬉しそうに微笑んで、俺の唇に軽くキスをした。
(二年越しの両想い。)
実った果実は甘い味――…。
(緋優くんって泣き虫だっけ?)
(…うっさい、…ばかっ)
(ほらほら、泣かないのー)
(こ、子ども扱いすんじゃねえっー!)
end.
―――――――――
前に載せていたもの。
よし(吉山)は緋優くんが誕生日プレゼントに靴を渡し、合わないにも関わらず、痛いながらも履いていたあのお方^^
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