第一章 戦場の記憶

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 それだけだった、もちろん顔を思い出したわけではなかったが、それでもあらかたの事情は嫌でも理解できる。 「あなたのお父さんとお母さんは…いないのよ」  …そうなのか…  やはり少なからずとショックを受けた、だけど彼女がこの事実を言うのにも辛さは伴ったはずだ、だからあえて自分の方こそ言葉が暗くならないように 「…ありがと、ビアンカ」  今はこれだけだ。  ビアンカが責任を感じる必要はない、そうだけど彼女は下を向いたまま「…うん」とだけ答える。  その時、さっきまでおとなしくしていたはずのシルバーがベッドの上に飛び乗ってきた。 「うわっいってぇ!」 「…っあはは!」  ナイスタイミング、くさい演出だな、お前も。 「ワンッワオォーン!」  なにが彼の琴線に触れたかは知らないが…ったく、人の上で遠吠えを始めるな。  やっぱ変わってないな、ビアンカも、リュウも。そうそう、リュウのことについてもだが…
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