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はっきりとしない意識の中、何らかの香りを楽しむ。
僕は……?
もしかして死んだのか……?
痛みは、ない、死んでいるせいだ。
何も聞こえはしない、死んでいるせいだ。
豪雨の中、そんな香り流されてしまうはず------
…死んでいるせいだ。
不思議と後悔するという選択肢は浮かんでこない。
どこか達成感にも似た感情が自分の心の内を満たしていた。
……なにもかもがボンヤリとしている、これも死んでいるせいなのだろうか。
しかしおかしい、何も考えられなくならないではないか、それに、至って冷静に考えている自分も…
答えが出た、意識が回復している、もしかしたら自力で目が開けられるかもしれない……
と、その時。
「エ、エルニードさん!?せ、先生ー!」
うう……寝起きの自分の近くでそんな大声を出されたら頭が痛い……事実物理的な意味で。
そうしてまず目に入ってきたものは無機質な白い天井だった、それはつまり----ここは町の病院だということが理解できる、ドスビスカスの花が近くに飾られているらしい、開け放たれた窓からそよぐ風が花の香りを自分に届けている。
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