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曲の合間に俺はハルに話しかける。
「お前、友達とかには連絡とったのか?」
「電話で話はしたよ。皆あっさりしてるよ。隕石落ちたら仕方ないね、って。」
「そうか」
「兄やんは?」
「え?俺か?俺はこんな時電話する友人なんていないしな…」
「…そうじゃないよ。恋人とかさ…」
「え?」
「だから!彼女とか!連絡しないの?明日一緒に過ごそうとかさ!」
普段ゆっくり口調のハルが早口でまくしたてたので、俺はびっくりした。
「…お前、俺に彼女がいると思うか?」
情けなさで暗い声が出る。
ハルは運転する俺をじっと見た。
「兄やん、カッコいいもん。いるんじゃない?」
…カッコいい?
ハルからそんな褒め言葉が出るなんて!
ハルは冗談なんて言わないヤツだから、本気でそう思っているに違いないのだ。
まぁ、それはそれなりに、女はつまみ食いしてきた俺ではあるが、本気で愛した女はいない。
はっきり言って結婚前提の恋愛はわずらわしいだけだった。
両親亡き後、ハルと二人三脚で頑張ってきた。
もうすぐハルも二十歳になる。
できれば、このままハルと二人で静かに生活したかった。
ハルが俺から独り立ちして離れていったとしたら、どうなるかわからないが。
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