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俺は硬い表情を作り、照れを隠した。
「いるわけないだろう?」
「本当?」
「俺の世話は大変なんだぞ。」
ハルが俺を見つめながら言う。
「知ってるよ。兄やんの世話は俺がしてきたんだもん。」
ハルの大きな瞳の眼力は半端ではない。
口数が少ないから余計にその眼力は物を言う。
「靴下は裏返しで脱ぎっぱなし、新聞はトイレに置きっぱなし、部屋の掃除もできないし、インスタントラーメンだって作れないもんね。」
ハルの眼力の非難に俺は肩をすくめた。
「休日は髭も剃らないし…兄やんの世話できるの、俺くらいだよ。」
「すいません…」
運転しながらパンを二つもらってCDを二枚聴き終わったころ海に着いた。
天気がいいせいか家族連れや恋人同士が多い。
俺達みたいに男同士なんて一組もいない…。
俺とハルは兄弟には見えないだろう。
ひょろりと背の高い骨ばった体格の父親似の俺と、柔らかそうな筋肉の少年体型の母親似のハル。
俺は細面の顔作りで、ハルは丸顔だ。
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