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鼻歌が途中で止まり、沈黙が流れた。
俺は目をつぶっているから、ハルがどんな顔をしているかわからない。
俺のセリフの響きはきっとハルをとまどわせているだろう。
海で膝枕をしてもらって言う「愛してる」は恋愛のシチュエーション上でのセリフだからだ。
俺の中でモヤモヤしていた感情があっけなく口から飛び出てきたせいで、俺は長い間抱えてきた汚い膿を吐き出せた気がした。
これで思い残すことはない。
ハルには後で「兄としてだ。バカ」と冗談めかして笑えばいい。
俺はまた瞑想状態に入る。
ハルの鼻歌が一曲歌い終わる位の時間が経った後
「なんなの、もう。」
ちょっと怒ったかのような呟きが頭上から聞こえた。
「喜んどけ。」
寝ながら俺は話す。
「なら、俺も愛してる。」
ハルが言う。
「ハイ、喜んでよ」
喜べ、と命令される。
「お前の好きと俺の好きは違うんだ。」
面倒くさそうに俺は呟いた。
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