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10も離れた俺の大切な弟。
血の繋がった弟だからこそ、愛おしさも増していく。
俺が10歳の時に産まれたハルは両親に溺愛された。
10年ぶりに新生児を産んだ母の誇らしげな顔を今でも俺は鮮やかに蘇らせることができる。
「ねぇ、トシ、赤ちゃんね、産まれつき少し身体が弱いんだって。お前、守ってあげてね。」
初めて母に一人前みたいに頼りにされて、俺は嬉しかった。
「ボクが一生、守ってあげるからね。」
他の保育器に入った赤ちゃんよりもずいぶんと小さいハルを飽きもせずに眺めながら、俺は心に誓った。
ハルはこの春大学二年になる。
人間嫌いのハルではあるが、成績は悪くなかった。
これからハルはハルなりの世界で、友人や恋人を作り、社会で戦ってひとり立ちをしていくのだろう。
この地球に未来があれば、の話ではあるが。
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